君 が い な い 日 。
雪 。



「何見る?」

「私あれがいい!今日公開の。」

「いいよ。えーっと次の公演は…。」


友達同士で遊びに来ている女の子達。



「面白かったな。」

「うん。また見に行こうね。」


はにかみながら笑う恋人達。




目の前をいろんな人が通り過ぎる中、僕は一人。


小さな映画館の前にある小さな時計台。

その下にある椅子に座っていた。




「また君か。待ち人は来ないのかい?」

「あっ、はい。」

そんな僕に、この映画館の店長がいつも話し掛けてくれる。


この会話も、これで何回目だろう。



「もうすぐ閉店だよ。」

「…はい。」

冬の冷たい風で、吐く息が白く染まっていく。


寒さでマフラーに顔を埋めて、コートのポケットに手にいれた。



帰らなきゃ。



映画館に背を向け、家に帰る。



積もっている雪に、僕の足跡を残して…。





やっぱり、どんなに待っても君は来ない。


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