恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
山の幸
「和彦も来るんなら、今日は泊まっていくわよね?今晩のご飯は、何にしましょうか?」
お茶も飲み終え、話しも一息ついたところで、母親の方がそう言い出した。
「そうだ。この前の地鶏がまだずいぶん残ってるだろ?あれで、今日は鍋にしよう!…よし!!俺がこれから山まで行って、自然薯も掘って来てやる!!」
父親がそう言いながら、鼻息を荒くして奮起し、即座に立ち上がる。
「そう!それがいいわ。真琴ちゃん、自然薯なんて珍しいでしょ?」
「はい。スーパーではたまに見かけますけど、あまり買ったことは…。自然薯っていうくらいですから、山に自然にできている天然ものなんですよね?」
都会育ちの真琴には、それがどんな風に山に生育しているのか、想像もつかなかった。
「それじゃあ、真琴ちゃんも一緒に行こうか!自然薯掘り!!」
「…えっ!?」
父親の提案に真琴が目を丸くするのと同時に、母親の方の表情が険しくなる。
「あっ!ダメよ!!お父さん、ズルい!!私だって真琴ちゃんと、一緒にお料理したいのに!」
「何言ってるんだ!料理なんて、いつでもできるだろう?自然薯は今日でないと…」
「自然薯こそ、その辺どこにでもあるんだから、いつでも採りに行けるでしょう?」
「いいや、いいや。いつでも行けないだろ!?真琴ちゃんはいつでもいるわけじゃないんだから!」
「お父さん、そんなこと言って、本当は真琴ちゃんを独り占めしたいだけなんでしょう?」