恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「ああ、そうだよ。和彦がいない、こんな絶好の機会なんてないからな!でも、自分だって同じ魂胆だろうが!!」
自分を巡って険悪になってしまったこの展開に、真琴はハラハラしながら、二人の言葉の応酬を聞いていた。
しかし、この場を収めるのは、自分以外にはいないので、真琴は知恵を絞って口を開いた。
「…あの!先にお義父さんと自然薯を採ってきますので、お義母さんとはその後一緒にお料理を作らせてください」
この真琴の一言で双方ともに納得し、この後の予定はピシャリと決まった。
「真琴ちゃん、その服が汚れたらいけないから。母さん、作業用の服を出してあげて」
そう言うと、父親は早速テキパキと準備を始める。
真琴も出してもらった母親の農作業用の服に着替え、いざ!自然薯取りへ向かうことになった。
乗り込んだ車は、シルバーのセダンの高級車。
軽トラは晶が使っているので、乗用車を使うしかないみたいだ。
古庄の父親は、その高級車で狭い山道を爆走した。
車がやっと通れるくらいの舗装もされていない道なのに、このスピード……!!
きっと慣れている道だからだろうが、真琴は怖くてしょうがない。
時折、木々の枝が飛び出していて、車をこすったりもしているのに、父親は傷がついてしまうことなんてお構いなしだ。
「もうちょっと遅い時期で狩猟期間になってたら、一緒にシシを獲りに行けたんだけど。残念だったなぁ…」
「……シシ……?」
悪路に大きく体を左右に揺さぶられながら、真琴が首をかしげる。
まさか獅子…ライオンのことではないと…思う。