恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



「シシって…、イノシシのことだよ。イノシシだけじゃなく、鹿とかも獲れるけどね」


古庄の父親は、一瞬ハンドルから手を離し、狩猟のための銃を構える仕草をしてみせた。


「は………!?」


古庄の父親の危険な行動にドキッとして、真琴の額には冷汗が噴き出してくる。


それにイノシシ狩りなんて、いくらなんでも怖すぎて無理に決まっている。
今日は自然薯採りで済んで本当に良かった…と、真琴は胸をなで下ろした。



ほどなくして、父親が車を停めた。
降り立ってみたけれど、どこを見てもうっそうと木々が生い茂るばかり。

父親は薯掘り用の道具をトランクから出して担ぎ、迷うことなく道から逸れて、木々の間へと分け入っていく。
とにかく真琴も、それに付いて行くしかない。


父親は掘る場所を探すでもなく、木々の枝葉の部分に目を走らせている。
さすがに真琴でも、自然薯は地中にできるものだとは知っているので、疑問に思い質問してみる。


「あの、どうして地面ではなくて、木の枝ばかりを探してるんですか?」


それを聞いて、父親はしたり顔でニヤリと笑う。


「やみくもに地面を掘っても、自然薯は出て来やしないからね。薯から出てるツルを探すのさ。…ほらこれ、ハート型の葉っぱだよ。ちょうど今は黄色くなってる」


と言いながら、そのツルを指さして、それからゆっくりとそれを辿っていく。
すると、そのツルはやがて地面にたどり着き、その根元はしっかりと地中の薯とつながっているというわけだ。




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