恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



「うん、これは大きいかもしれないぞ!」


歓喜に顔を輝かせながら、父親は早速、地面の枯葉をかき分けて掘り始める。
真琴の目の前で、10分もしないうちに、みるみる自然薯がその姿を現し始めた。


「わっ!出てきた!ホントに自然薯!!」


真琴も嬉しくなり、一緒になって父親の掘った穴の中を覗き込んだ。


「よし、あとは真琴ちゃんがコレを掘って。俺はまた別の薯を探すから」


そう言われて道具を渡されると、真琴は目を丸くする。


「えっ……!私が掘るんですか!?」


「そう、なるべく薯を傷つけないように。薯だってどんな形になってるか分からないから、気をつけて~」


真琴の戸惑いなどお構いなし、父親はそう言い終わらないうちに姿を消してしまった。



山の木々の生い茂る中で一人きりにされて、いきなり真琴は不安になる。


「あの…、お義父さん……?」


心細さのあまり、思わず声を上げてしまうと、


「ああ、大丈夫。近くにいるよ」


と、小枝をかき分ける物音と共に、返事が返ってきた。


それ聞いて安心した真琴は、薯掘り用の鍬のようになった道具を手に取りなおした。

薯の周りの土を、少しずつ掘り進めていく。確かにスーパーで売っている“長芋”のように真っ直ぐではないから、傷をつけないように掘るのは難しい。

慎重な性格の真琴は、まるで遺跡から遺物を掘り出すかのように、丁寧に少しずつ掘り進めていった。




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