恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
すると、地面から4、50cm掘ったところで、この薯は折れ曲がっていることが判明する。
必然的に穴はどんどん大きく深くなり、真琴は上半身を穴の中に突っ込むように、さらに慎重に土を削り、両手ですくって掻き出すことを繰り返した。
「どうだい?もう掘れたかな?」
しばらくして、古庄の父親が真琴のいる場所に戻ってきた。すでに3本もの自然薯が、その手には抱えられている。
しかし、真琴はまだ、悪戦苦闘の最中だった。
返事もままならず、顔を土で汚しながら頑張る真琴の姿に、父親はニッコリと微笑んだ。
「自分で最後まで掘るかい?それとも手伝おうか?」
そう投げかけられて、ようやく真琴は顔を上げた。
「…自分だけで掘り上げたいところですけど、きっとお義母さんが待ちくたびれていると思うので、お手伝いください」
真琴が言ったことにもっともだという顔をして、父親も穴の中を覗き込んだ。
「ああ、これは。すごい形の薯だったね」
と言いながら、父親の手にかかれば、ものの10分程度でその薯は掘り上げられた。
真琴に手渡された自然薯は、ずっしりと重く、先端部分はまるでグローブのような形をしていた。
この、何とも言えない達成感…!
初めは戸惑ったけれども、真琴の日常生活では得られない感覚で、これはやみつきになりそうだった。
そこに残された大きな穴を、父親が手早く埋め戻して、帰る準備をする。