恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
岩風呂にて…
古庄の実家に戻ってきたのは、もう夕暮れ時になってしまっていた。
奥の納屋の方には軽トラが停まっていたので、もう晶も農作業を終えて帰ってきているらしかった。
古庄も、もう真琴のアパートへと帰り着いている頃だろうか。
居間のテーブルの上に置いてきた手紙を見たら、どんなに驚くだろう…。
――…和彦さん、ごめんなさい…。
真琴は心の中で古庄に詫びながら、大空を覆い尽くす、燃えるような夕焼けを見上げた。
――和彦さんも、こんな空を見上げながらここで育ったのかな……。
そんなことを思うと、その美しさへの感動と相まって、真琴の胸がキュンと震えた。
「ああ、お帰りなさい。ついさっき、和彦から電話があったわ」
屋敷の裏手、勝手口から出てきた古庄の母親が、そう声をかけてきた。
それを聞いて、真琴の心臓がドキリと一つ大きく脈打った。
ここは電波が届かず、真琴のスマホは使えない。だから、古庄は実家に連絡を取ったのだ。
その電話で、古庄に何も言わずに来てしまったことが、母親にバレたに違いない。
「あの…、実は和彦さんには内緒でここに来てるんです。…何か言ってました?」
それを聞いて、母親はニヤリと面白そうに口元を歪ませた。
「真琴ちゃん。それ、ナイス♡和彦は『そこに真琴が無事に着いているか?』ってわめいてたけど、『真琴ちゃんなんて誰?知らないわ』って言ってやった!」
「え……?」
母親の意外な言動に、真琴の目が点になる。