恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
古庄が言われた通りに車を走らせると、そこには広葉樹の淡い緑に囲まれたログハウス風のカフェがあった。
「もう来てるみたい…」
真琴は唇を噛みながら駐車されている車を確かめて、そう言った。
そして、一緒に車から降りようとした古庄を制止する。
「いきなり古庄先生が現れたらびっくりすると思うから…。電話するので、少しの間ここで待っててください」
真琴はそう言い残すと、意を決するような表情を見せて車を降りた。
スマホを取り出し電話をかけながら、カフェへと入っていく。
真琴の緊張感に伴って、古庄の鳩尾にも冷たいものが落ちる。
運転席に座ったまま座席に頭を預け、目の前に広がる木々の緑を眺めるが、古庄の心は癒されるどころではなく、胸の鼓動はどんどん大きくなった。
真琴が電話で確認した場所に赴くと、その人はテラスの向こうに広がる景色から目を移した。
スラリとしたスタイルの洗練された美人は、相変わらずの優美さで真琴に微笑みをくれる。
「……静香さん」
「真琴ちゃん、久しぶりね。元気だった?」
「うん、お陰様で。今日はわざわざここまで来てもらって、ごめんなさい」
真琴は落ち着かなげに早口でそう言うと、静香の向かいに腰を下ろした。
「ううん。何も予定はなかったし、ここまでドライブできたし。真琴ちゃんにも会えたし。呼び出されても、いいことばかりよ」
静香はニッコリと笑って、気の利いたことを言ってくれる。
何と言って言葉を返そうかと、真琴が言葉を詰まらせると、店員が注文を取りにやって来て、とりあえずカフェラテを注文する。