恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
そこから古庄は再び変貌して、どんな女性も一目で恋に落ちてしまうような男性になったわけだ。
これまでにどれだけの女性の心を虜にして、その女性達とどんな風に付き合ってきたのか想像すると、真琴の胸が切なくチクン…と痛んだ。
「…今みたいになって、きっと和彦さんは、ものすごくモテたんでしょうね…」
晶は、その頃の古庄を知る人物だ。
訊いても仕方のないことだと分かっているけれど、真琴は訊かずにはいられなかった。
晶はその質問の意図を察して、チラリと真琴の顔色を確認した。
「大学生の頃のアイツのことは、よく知らないけど。不特定多数の女から一方的に言い寄られるのが、モテると言うんなら、確かに…、モテてたとは思う。それも、異常なほど。ここまで押しかけてくる女も、何人もいたからね。…でも、それが高じて、アイツは女に辟易したんだ。…前にアイツが結婚するって女に会った時……」
古庄の前の縁談…静香との話が出てきて、真琴はその胸が大きく脈打つのを映すように、表情をこわばらせた。
「ああ、適当なところで手を打つことにしたんだな…って思ったね。あんな身綺麗にしてるだけのつまらなそうな女、和彦は結婚に何も期待してないんだな…って」
――…静香さんは、つまらない女なんかじゃないけど…
と、真琴は晶の話を聞きながら、心の中で異を唱えた。
でも、晶くらい完璧な美貌とスタイルで、弟と同じような知性を持ち合わせているとしたら、静香でさえ“つまらない女”になってしまうかもしれない。