恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
しかし、電話に出た母親は案の定、真実を喋ってるのかどうか…、全く話にならなかった。
けれども、真琴は自分の実家にいるに違いない――。
古庄は携帯電話をポケットに突っ込むと、照明を落とし、真琴のアパートを飛び出していった。
試合の引率前に、着替えをするために一旦自分のアパートへ戻り、車で出かけたことが功を奏していた。
古庄は少し離れた場所にあるコインパーキングまで走り、寸分も無駄もない動きで車に乗り込むと、エンジンをかけ、発車させる。父親譲りの運転テクニックで、車を爆走させ、自分の実家へと向かった。
と言っても、実家まではずいぶん遠い…。
高速道路で1時間、それから一般道を2時間近く。しかも実家付近は、つづら折の山道だ。
しかし、古庄は一刻も早く実家にたどり着かねばならなかった。
あの“普通ではない”自分の家族たちの中に、“普通すぎる”家庭で育った真琴が一人でいるかと思うと、気が気ではない。
特に曲者なのは、姉の晶だ――。
古庄の中に、過去の忌まわしい記憶が甦ってくる。
あれは中学生の頃。
古庄は女の子から「つきあってほしい」と告白されたことがあった。
その頃の古庄は、まだ“恋”というものを知らず、その子のことを好きでも嫌いでもなかったが、それなりに可愛い子だったし、つきあうこと自体に興味を持ち始める年頃だったこともあって、その子の想いを受け入れた。