恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
怪しい酒
「真琴ちゃん。これ飲んでみるかい?俺が作ったブドウジュース」
母親が手作りしてくれた地鶏の鍋に舌鼓を打ち、お腹も満たされた後。
古庄の父親が、大きな焼酎のボトルに入れられた紫の液体をグラスに注ぎ、真琴に差し出した。
「はい…!」
容れ物は怪しかったが、その芳醇な香りに誘われて、真琴は一気にそれを飲み干した。
「……!?これ、ブドウジュースですか…?」
飲んでしまった後に、後味とのど越しがそうではないことに真琴は気が付いた。
「あっ…!父さん、それ。密造したワインじゃないのか?」
顔を怪訝そうにしかめて、晶が父親を睨む。
「密造とは人聞き悪い!アルコール度数1%以下なら、自家製でも問題ないんだぞ!」
「ホントに1%以下なのかしら。怪しいもんだわ」
母親も呆れ顔で、父親の方を一瞥した。
「もし警察に捕まっても、私を頼ったりしないでほしいな」
「あら?警察のお偉いさんにも、晶の知り合いがいるの?」
「さあ?この前まで、大学の同級生が県警の本部長をしてたけど。今はどうだろう?」
「へえ。こんな県の本部長にもキャリアが来るのねえ?」