恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
――…えっ?!キャリア…って?
密造やら警察やら、一連のきわどい会話を聞きながら、真琴は目を白黒させた。
それに、キャリアと同級生って…、晶は一体どんな経歴の持ち主なのだろう…。
「まあ、俺は警察に捕まっても、飲んだだけじゃ捕まりゃしないから。真琴ちゃん、美味しかったかい?どうだい?もう一杯?」
そんな風に言われて、真琴は困惑した。
確かに美味しいとは思ったが、密造酒かもしれない…と思うと、真面目な真琴には手が出せず、苦い作り笑いをするしかない。
「もう!お父さん。無理強いするのは、やめなさいよ。真琴ちゃん、そんな怪しい酒飲まなくていいから、私が浸けた梅酒を飲みましょうよ」
梅酒ならば、法律違反ではないので、真琴はそちらを頂くことにした。
と言うより、あまりお酒に強くない真琴は、そろそろソフトドリンクを飲みたいところだったが、アルコール以外の飲み物は目につかず、なかなかそれを言い出せずにいた。
「そうは言っても、昔はうちも酒を造ってたんだよ。酒蔵をいくつも持って、奉公人を大勢雇って。山をいくつも越えた所からも、うちの酒を買いに客が来てたもんだ」
お酒が入って気持ちの良くなった父親が、そんな話をし始めると、母親も晶もそろって呆れたような顔になる。
「また…。父さん、それ、いつの時代の話?」
「いつの時代って、江戸時代よ。まるで見てきたように言ってるけど、お父さんが生きてた時の話じゃないんだから」