恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「真琴……!!!」
古庄は、母親と晶と一緒に座卓を囲む真琴の姿を確かめて、いからせていた肩の力をホッと抜いた。
「和彦たん、おかえりなたい」
真琴は楽しそうにニコニコ笑いながら、古庄へと手を振る。
――…おかえりな、「たい」…!?
とろけそうな目つきに、緩みきった口元。それにこの呂律…。
「…おい!真琴にどれだけ飲ませたんだよ?!」
血相を変えて、古庄は母親と晶を睨みつける。
「どれだけ…?さあ、どのくらい飲んだかしら?」
相変わらず、母親の受け答えは先ほどの電話と同様、当てにはならない。
「そんなに飲んじゃいないよ。最初にビールを2、3杯。それから父さんの作った怪しいワイン1杯。それから、この梅酒を2杯くらいかな」
それに比べて晶の答えは的確だったが、まるで危機感はなかった。
「怪しいワイン…って?それに、梅酒だってロックで、だろ?飲みすぎだ!飲ませすぎだっ!!」
実家に到着した直後だというのに、古庄はすごい剣幕でまくしたてた。
「いいえ、和彦たん。大丈夫れす。お義母たんの梅酒、美味しいので、まだ飲めま〜すっ…!」
古庄の心配をよそに、真琴はますます表情を緩ませて古庄へと笑いかけ、梅酒の入ったグラスを手にする。
「わ~っ!!真琴!もう、飲んじゃだめだ!!」
とっさに古庄は真琴に駆け寄って、その手からグラスをもぎ取った。
古庄の一連の動きを見て、晶が面白そうにからかい始める。