恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
一瞬の沈黙の後、母親と晶が爆笑する。
古庄は顔を真っ赤にして、躍起になって説明した。
「…お、俺は男だ!生まれた時から正真正銘の男だけど、小さい時はそんな服を着せられてただけだ!!」
「ウソだ。小学校に上がるまでは、自分のこと女だと思ってたくせに」
意地悪な晶のツッコミに、古庄の中に忌まわしい記憶が甦ってくる。
幼稚園のお泊り保育のお風呂で、古庄は覚醒したのだ。
自分が女ではないことに。
髪を長く伸ばしているのにもかかわらず、古庄の体には女の子にはないものが付いていた。姉の晶のように、これはその内取れるか、引っ込んでいくのだろうと思っていたのだが…、そうではないことを、その日古庄は知ったのだった。
普通に育ててくれていれば、そんな風に翻弄されずに済んだのに…。
この出来事は、幼い古庄の心に不信感を植え付けた。
「だって、まだ着られる晶の服があるのに、男の子の服を買うなんて勿体ないじゃない?だから、お下がりで着せてただけじゃないの」
しかし、今もこう言う母親は、その当時から全く悪びれる様子はなかった。
恥ずかしさと憤りで、真っ赤な顔をして立っている古庄を見上げて、真琴はニッコリと嬉しそうに笑った。
「…そうなんですか。でもホントに、男の子とか女の子とか関係なく、すごく可愛い♡」
古庄はその素直な笑顔に思わず見とれて、その心の中にわだかまる母親への感情も、なだめられてゆく。
アルバムの中の“可愛い”古庄を、愛おしそうに見つめる真琴の眼差しに、古庄の胸がキュンと痺れた。