恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「やらしいことって…?どんなことかな?」
「………」
晶の意地悪な切り返しに、古庄はますます顔を赤くして、何も言い返せない。
すると晶の方も、この分かりやすい素直すぎる弟を、もっといじめてやりたくなる。
「やらしいことって、お前だっていつも、真琴ちゃんとやってるんだろ?」
効果覿面、古庄は蒸気が立ち上りそうなほどの形相になる。
「おっ、おっ、おっ、俺はっ…!俺たちは…っ!夫婦なんだから」
「ふうん…」
しどろもどろする古庄に意地悪な視線を向け、表情に笑いを含ませながら、晶はさらに古庄を観察する。
その視線に耐えかねて…古庄は業を煮やした。
「姉貴はもういいよ!あっち行っててくれよ!」
と、晶の背中を押して、襖の向こうへと追い出した。
…が、その瞬間、古庄の腹の虫が鳴る。
そういえば、真琴のアパートを出てからここに来るまで、何も飲まず食わずだったことに、古庄自身初めて気がついた。
「そうだ。鍋の残りがまだあったと思うから、あれを食べたらいい。食べたら、後片付けもやっとけよ」
と言いながら、遠ざかっていく晶の声。
思いやりがあるような、ないような…。
久しぶりに相対する晶は、やっぱり相変わらずだった。