恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
お仕置きだ!
古庄が食事を終え、そのままになっていた宴会の片づけをし、風呂に入って先ほどの部屋に戻って来れたのは、ずいぶん夜も更けてのことだった。
襖をあける古庄の気配に、撃沈していた真琴の意識が浮上する。
「……はっ!和彦さん!?…私…。えっ?!」
戸惑って起き上がる真琴を顧みて、古庄は呆れたように息を抜いた。
「親父の怪しい酒を飲まされて、ひっくり返ったんだろう?…それでなくても、普段は飲まないのに、飲みすぎだ」
古庄の諌めるような口調に、真琴は布団の上で肩をすくめて小さくなった。
「……黙ってここに来てしまったこと。…怒ってますか?」
上目づかいでそんな顔をされると、古庄の中に、怒りなんてこれっぽっちも込み上げてこない。
逆に、神妙すぎる態度に、笑いが湧き出してくる。その笑いを押し隠して、古庄は真琴に向き直った。
「怒ってはいないけど、……すごく心配したよ」
「…ごめんなさい」
そして、こんな風に素直に謝られると、それ以上責めようなんて気持ちさえ失せてしまう。
「もとはといえば、俺が連れて来なかったのがいけなかったんだよな。君は何度も『行きたい』って言ってたのに」
挙句の果ては、責めるどころか、古庄は自分の非を認めてしまった。
「…どうして、今まで連れてきてくれなかったんですか?」
真琴からその質問をされて、古庄はため息を吐く。
「俺の家族、“普通”じゃないだろ?ぞんざいで遠慮がない。君がオモチャみたいな扱いをされるんじゃないかと恐れてたんだ。君は真面目だから、それを真っ向から受け止めて、きっと翻弄されるだろうと…」