恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「実は、校長先生に教えてもらったんです。スマホの地図にピンを立ててたんですけど、途中で電波が来なくなって、道が分からなくなって…」
――…なるほど。そういうことだったのか…
この一件に、校長も一枚噛んでいたとは。
確かに、古庄の高校時代にクラス担任でラグビー部の顧問だった校長ならば、古庄の実家のこともよく知っている。
「それで?道が分からなくなって、どうしたんだい?」
「ちょうど稲刈りをしていたお義姉さんに出会ったんです」
「稲刈り?今頃…?」
稲刈りをするには遅すぎると訝りながら、運良く晶がいてくれたおかげで、無事に真琴がここにたどり着けたと知って、古庄は胸をなでおろした。
「とにかく、姉貴がいなかったら、どうするつもりだったんだ?…道も知らないのに独りで来るなんて、君は思いのほか無鉄砲なんだな」
内緒で行動を起こされたこともあって、古庄はチクリとささやかな意地悪を言ってみる。
すると、真琴は恥ずかしそうに唇を噛んだ。
「やっぱり、あなたがいないと心細くて…寂しかったです…」
その言葉に、古庄の胸はまたキューンと痺れて、同時に鼻息も荒くなる。
「俺に内緒で来たりするからだ…!…そんな悪い子は、お仕置きだな」
「………!」
古庄の物言いに、真琴は目を丸くして古庄を見上げた。
けれども、それから真琴が何も反応しないので、古庄はいささかヘンタイじみた自分の言葉を軽蔑されたのでは…と、後悔し始める。