恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「だから…ダメです…!あそこの襖が開いてます!」
古庄の肩越しに見えた襖が、数センチ開いていることに気がついて、真琴が指摘する。
「なにっ…!?」
古庄は即座に立ち上がると、襖の開いた所へと直行して、襖を閉めるのかと思いきや、スラリとそれを開け放った。
するとそこには、晶が驚いた顔をして、つっ立っている。
「何やってるんだよ?今、覗いてただろ?!」
「いや…、真琴ちゃんのことが心配で…」
「何の心配だ?!余計な心配しなくていーよ!」
言い訳をしながらの悪びれない晶の笑顔はろくに見もせず、古庄は何かを気取って「はっ!?」と振り返った。
反対側の襖へとツカツカと歩み寄り、ピシャン!と再び開け放つ。
なんと今度は、そこに、父親と母親が襖に耳を付ける体勢のまま並んで立っていた。
真琴がとっさに胸元を押さえながら、赤面して布団の上に思わず起き上がる。
古庄は、それぞれに隣の部屋にいて、古庄と真琴の様子を窺っていた晶と両親を睨みつけて、
「ああ、もう!!……くそうっ!!」
と、それ以上の怒りはあまりにも強すぎて、言葉にもならなかった。
真琴へと足早に歩み寄ると、その腕を取って立ち上がらせ、寝床のある部屋を出て行く。
玄関に降りて靴を履き、真琴を車の助手席に押し込むと、自分は運転席に乗り込んでエンジンをかけた。