恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
満天の星空
「…和彦さん?!帰るんですか?私、荷物を置きっぱなしです」
焦ったように真琴が声をかけても、古庄はそれさえも聞き入れなかった。
昼間の父親の運転と同じように、怒りにまかせて車を爆走させる。
真琴はもう口さえも開けずに、古庄の様子を見守った。
それに、今走っているのは帰る道ではない。父親と自然薯を掘りに行ったのと同じ方面に向かっていることに気が付いて、真琴はただ黙って古庄の次の行動を待った。
しばらく車を走らせて、小高い山の山頂付近に、古庄は車を停めた。
車が2、3台駐められる空き地の横に、小さな平屋の建物がある。
古庄は先に降りて建物の方へ向かったけれども、真琴はあまりの暗さに足がすくんで車から降りられない。
すると、古庄が戻って来て、手を取ってくれた途端に怖くなくなり、すんなりと降りられた。
「…ここは?」
真琴の肩を抱いてゆっくりと建物の方へ歩く古庄に、真琴が尋ねてみる。
「この山は全部、うちの家の土地なんだ。ここは、親父の作った焼肉小屋だよ」
古庄はそう言いながら、駐車をした所から建物の向こう側へと真琴をいざなった。
そこには広々としたウッドデッキが設えられており、建物の大きな窓から目を凝らして見ると、中には大きな炉が備え付けられてあった。
「あれで、お肉を焼くんですか?すごい。一度に大量のお肉が焼けますねぇ!」
真琴が思わず、感嘆の声を漏らす。