恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「姉貴が知り合いの畜産農家から、大量の肉を調達して来るんだ」
古庄はそう説明しながら、
――調達じゃなくて、なかば強奪かもしれないけど…
とは思ったが、それは口に出さなかった。
「親父は、暇さえあれば、こういうのを作るのが趣味らしい」
古庄がそう言うのを聞いて、真琴はあの立派な岩風呂を思い出した。
それだけではない。密造(?)ワインやマムシ酒までも…。
「あなたのお父さんは、本当に興味深い人なんですね」
ニッコリと幸せそうに微笑みながら、真琴は相づちを打った。
しかし、古庄は諦めにも似たため息を吐く。
「…親父だけじゃない。俺の家族は変わってるだろう?さっきだって、俺たちの部屋の様子を窺ってた。……嫌にならなかったかい?」
普通の感覚なら、付いていけずに呆れるか、嫌悪してしまう…。古庄はそう思い込んでいた。
古庄の友人の中にも、お嫁さんと自分の両親との折り合いが悪く、悩みを抱える者もいる。
そんな悪い例を思い描いて、真琴に自分の家族を会わせることが気重だった。
そして…、そんな変人たちと血縁にある自分までも、真琴に嫌われるのではないかと、……それが怖かった。
「あなたが、あのお義父さんとお義母さんの子どもだと思うと…、ワクワクして楽しくなってきます」
真琴がそう返してきたのを聞いて、古庄は目を丸くする。