恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
真琴の言葉を受けて、古庄も星空を見上げる。
何の変哲もない山々に、この空。
古庄にとっては、小さな頃から珍しいものでもなんでもなかった。
「今日は月が出てないから、特に星がよく見えるんだな」
古庄がそう言葉をかける間も、真琴はただ星々に魅入られている。
「これが本当の『天の川』なんですね…。私は生まれて今まで、それがどこにあるのかなんて知りませんでした…」
都会育ちの真琴の見上げる夜空はいつも明るくて、特等星や一等星くらいしか確認できない。
頭の上の天の川は、「ミルキーウェイ」といわれるのが頷けるほど、微細な星々が淡く放つ光が繋がって、本当に黒い墨汁の中に牛乳を垂らし込んだように見える。
いつまでも時を忘れたように、首を反らせて頭上を見上げる真琴に、古庄が言った。
「真琴、こうやって寝転がると見やすくなるよ」
古庄はウッドデッキの上に仰向けになって、星空を見上げた。
真琴は古庄の提案に嬉しそうに微笑み、古庄に倣って横になった。
こんなに広いウッドデッキなのに、そっと寄り添うように側に来るのが、なんとも言えず可愛らしくて、古庄は顔が緩んでしまう。
もう星空などどうでもよくなって、思わず真琴を抱き寄せ、キスをしようとした時、再び真琴が口を開いた。
「この空を見せてくれるために、ここに連れて来てくれたんですね?」
「…………えっ?!」
古庄は口ごもってしまう。