恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



「…じっ、自分こそ、どんな“やらしい”こと考えてるんだよ!あんな所で、そんなことするわけないだろ?」


焦ってそう言い返しながら、古庄は晶の洞察力に恐れを感じた。
何で、自分の考えていたことが判ってしまうのだろうと…。


とにかく、晶と会話をしていると、いつもこんな調子でからかわれてしまう。
晶はその時々の古庄の反応や様子を見て、楽しんでいるのだ。そう、子どもの頃から。



早く晶の傍を離れようと、古庄は足早に周り縁の廊下を歩いて、居間へと向かう。
障子を開けると、居間の向こうの台所に立つ真琴の姿が認められた。


救いの神を見つけたような気がして、古庄の心がホッと落ち着く。いつも居心地の悪かった実家のこの居間も、まるで別の場所のように思われた。


「ああ、晶が和彦を起こしてきてくれたわ。さあ、食べましょ!」


「はい」


真琴が母親と共に、お盆に朝食を載せて運んでくる。


「おはようございます。和彦さん」


「おはよう」


「一緒に料理をする」という母親との約束が果たせて、真琴はとても満足そうだ。

自分の家族と楽しそうにしている真琴を見ると、古庄も和んだ気持ちになってくる。自分の家族に対してこんな気持ちになったのも、古庄の記憶にはないほど、遠い過去のことだった。





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