恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
穏やかで楽しい朝食が済んだ頃、晶が財布から一万円を取り出し、母親に渡す。
「母さん。それじゃ、これ。約束のもの」
「ああ!そうね。お父さんも、忘れないうちに下さいよ。一万円」
「ああ、…うん」
目の前でそんなやり取りがなされて、真琴の目には何気なく映ったけれども、古庄は眉間に皺を寄せて、不穏な顔つきになった。
「……今度は、何を賭けたんだよ?」
「さあ?何だったかしらね~」
古庄からの詰問に、母親は相変わらずの態度でかわそうとする。
この家族たちは、古庄のラグビーの試合の結果や大学試験などの合否、30歳までに結婚するか…などなど、何かにつけ事あるごとに、古庄をネタに賭け事を繰り返していた。
母親の態度の反面、古庄に対して恐れることのない晶は、ありのままを暴露する。
「お前が前の結婚を止めた時に、お前は『ホモなんじゃないか』っていう疑惑が出て、ホモかそうじゃないかを賭けてたんだ。真琴ちゃんと結婚したってことで、『ホモじゃない』って結果が出たってことだな」
「…ってことは、親父も姉貴も、俺がホモだって思ってたってことか?」
実の息子や弟を、そう簡単に“ホモ”にしてしまうなんて、どういう家族たちだろうと、古庄は憤りを隠せない。
不機嫌になっていく古庄の声に、父親が決まり悪そうに肩をすくめる。