恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
静香が自分の思いをとうとうと語る間も、真琴と古庄は何と言葉をかけたらいいのか分からず、ただ黙って聞いていた。
古庄の頼んだコーヒーが運ばれてくる。
クリームを入れて、スプーンでかき混ぜて、古庄がコーヒーカップを口に運ぶ。
その古庄の動きに、今の状況も忘れて真琴が思わず見とれてしまうのと同じように、静香も古庄を見つめていた。
「真琴ちゃんに一目惚れしたんなら、ずっと悩んでたんでしょう?」
静香に問いかけられて、古庄は少し戸惑ったような色を浮かべたが、薄く微笑みを浮かべて口を開いた。
「いや、悩むっていうより、初め俺は全く真琴に相手にされてなかったから。嫌われているとさえ思ってた。諦めきれずに告白しても、真琴は俺が君と結婚することを知っていたから、突っぱねられたよ」
そう言いながら、古庄はチラリと真琴を見遣る。
真琴はその視線に応えることなく、ずいぶん冷えてしまったカフェラテを口に含んだ。
「君との結婚をやめてしばらくして、真琴が俺の想いを受け入れてくれてからも、1年間は付き合えないって言われて。…それで、1年待って、籍を入れたんだ」
その話を聞いていた静香が、眉間に皺を寄せる。
「どうして、1年間?」
その問いが自分に向けられていると気付いた真琴は、顔を上げて静香を視界に捉えた。
切ない目をして静香を見つめながら、真琴は自分の中の思いを言葉として表現するのに、少しの時間を要した。
「静香さんを傷つけてしまったのに…、静香さんの傷が癒えるまでは、とても…」
真琴は込み上げてくる涙を堪えて、首を横に振る。
失意の親友の存在を忘れて、古庄の傍に寄り添って、幸せそうに甘い時間を過ごすなんて、真琴には到底できることではなかった。
真琴のこの言葉に、静香は息を呑んで唇を噛んだ。