恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「古庄先生…、やっぱり人気があるんだね」
「そうですねぇ。古庄先生は別格ですから、ダントツ人気です」
30代も半ばに差し掛かろうかというのに、古庄の相変わらずのこの人気に、真琴は閉口した。
これで、古庄が実は自分と結婚していることが明るみになったならば、恨みやヤキモチを一身に受けることになるのだろうか…と、真琴の鳩尾に冷たいものが落ちていく。
「それにしても、随分たくさん撮ってるけど、全校生徒に1枚ずつ配布できそうなくらい…」
「アハハ…!古庄先生は、どんな角度からでも本当に絵になりますから、撮り甲斐があるんです!」
と、真琴の指摘に対して、写真部員は笑った。
「でも、他に生徒も撮ってますよ。男子が女子の写真を頼んでたりもするし。賀川先生も1枚どうですか?材料費の100円で綺麗にプリントして差し上げますよ」
そう写真部員に売り込まれて、真琴は肩をすくめた。
頼むとしたら古庄の写真を頼むことになるのだが、会話の流れからして、「じゃあ、私も…」なんて、到底言い出せなかった。
そうしている内に、写真部員の被写体である古庄が、職員テントへと戻ってきた。真琴を見つけて優しい笑顔を作った瞬間にも、パシャリ!と、フラッシュが光る。
「…大変でしたね。」
砂まみれになっている古庄の姿を見て、真琴が声をかける。
「うん、まあ。大したことないよ。久々にラックの下敷きになった時のことを思い出したけど…」
それを聞いて、真琴の表情に影が差す。
「古庄先生、ラックの下敷きになったことがあるんですか?大丈夫でした?骨折とかしなかったですか?」
真琴の過剰な心配に、古庄は逆に目を丸くする。そして、「ああ…!」と、いっそう優しげに微笑んだ。