恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
過去の経験
抱擁の途中で、古庄は真琴にキスがしたくなったが、思い止まった。
焦らなくても、今日はこれからずっと一緒にいられる。
誰にも邪魔されることもなく、一晩中ずっと。
その甘いひと時を思っただけで、古庄は居ても立ってもいられなくなった。
こんな所でぐずぐずしてなんてしていられない。
真琴の涙がひと段落しているのを見て取って、早速行動に移す。
「さあ、俺たちは俺たちの道を行こう」
そう促すと、助手席のドアを開けて、真琴を車に乗せた。
真琴も気を取り直して、涙の残る瞳で、古庄に微笑みかける。
成すべきことを成し遂げて、心配事のなくなった真琴の澄んだ笑顔に、古庄の胸がキューンと絞られる。
思わずこの場で押し倒したくなるが、その情動を必死で抑え込んだ。
きちんと同意を得てからでないとダメだ。
真琴には、それしか考えていない男だとは思われたくない。
それに……、もし真琴が初めて…ということになれば、それなりの配慮も必要になってくる……。
ドライブすること数十分の後、それを確かめるべく、古庄は口を開いた。
「真琴は…、俺と出逢う前に、付き合った男とかいた?」
いきなりの質問に、真琴が目を丸くして古庄を見つめた。
「どうして、そんなこと訊くんですか?」
「自分の奥さんの男性遍歴くらい知っておきたいじゃないか」
「男性遍歴…って、そんな風に言うほど付き合った人はいません」
真琴はほのかに顔を赤くして、焦ったように答える。
その反応に、古庄の心がざわめいた。
知り合ってからこれまでの真琴の日常を見る限り、まるで男っ気など感じられなかったから、古庄は全く安心しきっていた。
けれども、そうではなかったようだ。