恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「……ということは、少しはいたんだな…」
「少しは…というより、一人だけです。大学の時に、付き合っている人がいました」
「大学の時か…、じゃあ、もう大人だな…」
含みを持たせている古庄の受け答えが、真琴も気になったらしく、その意味を探るような目線を向けた。
内容が内容だけに、古庄はそれを尋ねるべきか迷ったが、思い切って切り出す。
「真琴は、…その彼氏と、やってたのか?」
真琴の表情の上の疑問の色が、もっと濃くなる。
「やってたって、何をですか?」
いつもは打てば響くように古庄の意図を汲んでくれる真琴だが、そういうことにはやはり疎いらしい。
事実を聞き出したかったら、古庄ははっきりと問う必要があった。
「…だから、その、キスをしたり、それ以上のことだ…」
「……は!?」
ためらいがちに古庄が尋ねた途端、真琴は顔を真っ赤にして口を手で覆った。
そんな真琴の反応を、とても可愛らしく感じて、古庄の胸がキュンと鳴く。
しどろもどろになって、言葉を探して焦っている感じなのが、また可愛い。
「…それは…、付き合ってたんだから、そういうことだってしてました……」
伏し目がちにそう言った真琴の言葉を聞いて、今度は古庄が絶句する番だった。
古庄の知る真琴は、抱きしめるだけで身体を硬くして、抱きしめ返してくれるのだってぎこちない。
過去に男とそういう経験をしていることなんて、片鱗さえも感じられなかった。
戸惑いの中に、モヤモヤと言いようのない感情が立ち込めてくる。
古庄が表情を曇らせて黙ってしまったので、真琴は決まり悪くなって心配そうに様子を窺った。