恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
この笑顔を見ると、過去のことなんてどうでもよくなってくる。
これから残りの人生、こうやってずっと手を携えて一緒に生きていける……。
そう思っただけで、古庄の心が震えた。
そして、この真琴の笑顔のために全てを捧げたいと、心の底から思った。
古庄が見つけてきた旅館は、山あいにある藍沢温泉の街からも少し離れたところにあった。
「こんな山の中に、旅館があるんですか?」
運転をする古庄に、真琴が声をかける。
「うん…。ナビじゃ、そうなってるな。広大な敷地に離れが点在しているっていうところだから、人里離れてるんじゃないかな」
「えっ?!離れなんですか?すごい!そんなところに泊まるの初めてです」
真琴が嬉しそうな顔をして感激するものだから、古庄はすっかり気を良くして鼻息を荒くする。
「離れで食事も出来るらしいし、露天風呂も付いてるから、一緒に風呂にも入れるよ」
「………えっ!?一緒に…?!」
真琴が拳を口に押し当て真っ赤になると、古庄もその反応の意味を気取って同じように真っ赤になった。
「…いや、別に一緒じゃなくてもいいし、他に大きな露天風呂もあるらしいから」
そう言って、古庄が刺激的な事実を多少はなだめてくれたが、一旦激しくなってしまった真琴の動悸は収まるどころではなかった。
先ほどの話題といい、今のことといい、「そのこと」が真琴に重くのしかかってくる。
もちろん、真琴だって「そのこと」が嫌なわけではなく、何も飾ることのないありのままの自分を投げ出して、古庄に包み込んでもらいたいという願望もある。
けれども、こうやって車という密室で二人きりでいるだけで、こんなにも息苦しいのに、古庄に見つめられ「そのこと」をしようものなら、自分はどうなってしまうのだろう…。
それほど、真琴にとって古庄は、圧倒的で完璧な存在だった。