恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
 
 
 

「ラックって、『棚』だと思ったんだな。そうじゃなくて、ラグビーのラックのことだよ。地面にボールがあって、その周りにプレーヤーが密集してボールを奪い合う状態を、ラックって言うんだ。」


「…あ、そうなんですか…」


真琴は、自分の勘違いを恥ずかしく思いながら、ラグビーのことについて自分が何も知らないことに気が付いた。

かつての古庄は、このラグビーに夢中になった時代もある。
もっと古庄を知るために、真琴はラグビーのことももっと知りたいと思った。

古庄について知らないことが、まだまだたくさんある。
知らないことを知っていく過程は、新たな一面を見つけることと同じで、真琴の胸はドキドキするのと同時にワクワクした。



その時、次の競技の「クラス対抗リレー」の招集がかかったので、写真部員たちはいそいそと撮影場所を変える。真琴も、溜息を吐いて立ち上がった。


クラス対抗リレーは学年別に行われるのだが、これにはクラスの俊足の精鋭8人とクラス担任が出場することになっている。

2年3組の担任である真琴も当然、スターターとして走らねばならなかった。


運動においても、可もなく不可もない凡庸な真琴は、これが少し気重だった。

担任の8人のうち、女性は真琴を入れて2人しかいない。女性教師はハンデとして10mほど前から出発できるのだが、自分が生徒たちの足を引っ張るのは目に見えていた。


あっという間に1年生のリレーが終わり、次は2年生…。

真琴はドキドキと激しい鼓動を伴いながら、スタートラインに立った。



「キャ―――――ッ!!古庄先生ッ!!」

「古庄先生、頑張って―――っ!!」



同時に、古庄の登場に女子生徒たちが沸く。
その声が耳に入っているのか、古庄は声援に応えることなく、他の担任と共ににこやかにバトンを受け取り、スタートの準備をしている。




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