恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
真琴は合わせられた襟を開いて、浴衣を肩から外すと、するりと足元へと落とした。
古庄が目にしたものは、月の光を浴びて光り輝く、真琴の一糸まとわぬ姿――。
今度は、古庄が声をなくす番だった。
声の代わりに、愛しさと切なさが入り混じったその眼差しはいっそう深くなる。
言葉のない二人の間に、虫の声だけが響き渡っている。
古庄が何も発しないし、何も行動しないので、真琴は恥ずかしさと緊張で、体の芯から震えはじめるのを感じた。
すると、古庄は一つ息を呑みこんで口を開いた。
「…君に、触れてもいいか…?」
これまで真琴が聴いたことのない、少しかすれた声だった。
真琴はまだ言葉で返すことが出来ず、ただ一つ頷いた。
古庄は一歩真琴に歩み寄り、腕を伸ばす。
その手のひらが触れたのは、真琴の頬だった。
触れられた瞬間、電流が走るような感覚とともに、真琴は古庄を見上げた。
真琴の中には安堵が満ちてきて、自分もこうやって古庄に触れられたかったのだと、改めて悟る。
古庄は手をゆっくりと動かし、頬から首筋、鎖骨へと丁寧にたどった。
そして、胸の丸みの外側を通って、腰へと腕が回される。
真琴の視界の月の光が遮られて、唇が重ねられた。
目を閉じた暗闇の中で、優しいキスは何度も繰り返された。
フワリと浮遊感の後に、ひんやりとした布団のシーツを背中に感じ、真琴は目を薄く開いた。
月の光が差し込む部屋の中で、古庄が帯を解き浴衣を脱ぎ捨てている。
スラリとした外見からは想像もできない、均整のとれた筋肉に覆われた美しい古庄の姿。
青白い月明かりの中で浮かび上がったその姿は、そっと真琴の隣に身を横たえた。