恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「これから、二人でどんな風に生活していくのか、とか」
確かに、きちんと話し合って決めておかなければいけないことは、たくさんある。
真琴は頷いて、少し考えた。
「…やっぱり、二人で一緒に住むのは無理だと思います」
いきなり持ち出された真琴の結論に、古庄は無言で顔をしかめ、不服の意志表示をした。
「生徒や地域の目がありますから、一緒に住んでいれば、そのうち結婚していることはバレてしまいます」
隣に誰が住んでいるのか分からないような都会ならともかく、田舎町の教員は目につきやすい。
ましてや古庄は、そこだけくっきりと切り取られたように目立つ存在だ。
「……じゃあ、ずっと今のままか?これじゃ、普通のカップルと変わらないじゃないか」
古庄は憮然として口を尖らせた。
こんな時、真琴の思慮深さが恨めしくなる。
あんなに情熱的な夜を過ごしておいて、別々に暮らす方が不自然だ。
誰にも邪魔されない愛の巣で、抱きしめて、キスをして、そして…という夜を毎日でも過ごしたい。
何よりも、昨夜のような真琴を知ってしまったら、片時も離れていたくなかった。
「ずっとじゃありません。来年の春になって、古庄先生が異動をすれば結婚していることも公表できるし、一緒に暮らせるようになります」
古庄は苛立っているのを隠すように、目を閉じて考えるふりをした。
来年の春までには、あと半年もある。
また待たされるなんて、本当にうんざりだった。
何としても、「今のまま」という状況は回避したい。
でも、用心深い真琴は、住処を一緒にすることには同意してくれないだろう。