恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
担任の8人は、大体真琴や古庄と同じ年代。バトンはそのまま生徒に引き継がれるので、クラスの順位にも関わってくる。
初めから勝負を諦めている小太りの戸部や女性教師を除いて、担任同士のメンツをかけた勝負が始まろうとしていた。
スタートのピストルが鳴り、数秒もしないうちに、真琴は古庄に抜かされた。
過去のこととはいえラグビーで培った能力は、さすがに群を抜いている。
「キャ―――――ッ!!!」
「古庄先生っ。カッコいいっっ!!!」
と、ますます黄色い声が飛ぶ。
古庄のクラスの男子生徒たちも、
「いいぞ!古庄ちゃん!!頑張れ―――っ!!!」
と、エキサイトして檄を飛ばした。
すると、今度は団子状態になった他の担任たちが、真琴に追いついてきた。
無理に抜かそうとした一人と、真琴が接触する。そのあまりの勢いに、真琴はバランスを崩し……そのまま激しく転倒してしまった。
「ああっ!!賀川先生っ!!!」
真琴のクラスの生徒たちが、悲痛な叫びをあげる。
と同時に、
「…古庄ちゃん、何やってんだ……」
古庄のクラスの生徒たちが呆気にとられる。
真琴の転倒に気が付いた古庄は、コースの半分以上を引き返して、真琴のもとへと駆けつけた。
倒れて立ち上がろうとしていた真琴に手を貸し、
「大丈夫か?」
と、真琴の顔を覗き込む。
これに驚いて顔を真っ赤にし、ますます焦りを募らせたのは真琴の方だ。
「…だ、大丈夫です。何やってるんですか!早く走ってください!!」
そう言うや否や、真琴自身も急いで走り始める。
古庄もそう言われて、心配そうに真琴を振り返りながら、再び前を向いて走り始めた。