恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



突然、声が響いたと思うと、居間に14,5歳といったところの男の子が飛び込んできた。


「ねえ、ねえ!僕、今部活から帰ってきたんだけど。スクリューパス。僕、なかなか出来なくてさー。難しいんだー」


そう言いながら、古庄と並んでソファーに座る真琴の隣へとやって来て、わずかな隙間にお尻をねじ込んだ。


「っていうより。部活、めちゃくちゃキツくてさー。もう、ヤになっちゃったんだ~。やめちゃおうかな~。ね、どう思う?お姉ちゃん!」



「ちょ…、ちょっと待って。正志ちゃん。」



真琴は自分のお尻を古庄の方へとずらして、座るためのスペースを作ってあげる。


「この子は、正志(ただし)って言います。私の弟です」


その言葉が自分に向けられたものではないと気が付いて、正志は古庄の存在に気が付いた。



「……誰?」


と訊きながら、その古庄の容姿を確認して目を見開いている。




「この人は、古庄和彦さん。私の旦那様になった人よ。」




古庄自身、気持ちの準備もなくそんな風に紹介されて、心臓が跳び上がった。



「………!!!?」



しかし、あとの3人の驚きは、古庄の比ではなかった。



「…だ、旦那様って、どういうこと?!」



正志は下ろしたばかりの腰を上げて、立ち上がった。その正志を見上げて、真琴が答える。


「どういうことって、古庄先生と結婚したのよ」



「…け、け、け、結婚……!?」



今度は母親の方が声を上げたかと思うと、お茶の載ったお盆をひっくり返し、

ガッシャ―――ン!!

と、けたたましい物音が鳴り響く。


「お母さん!大丈夫?」


驚いた真琴もソファーから跳ね上がり、雑巾を取りに走り出す。


そして、衝撃に対するこの周囲の動揺にもかかわらず、何も反応を示さないのが父親の方だ。
微動だにせず宙を見つめているのは、“怒り”がそうさせているのかもしれない。




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