恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
古庄は焦燥に駆られ、何か言わねばと立ち上がる。
ソファーの横に立ち、一歩下がると、頭が膝に着くくらい体を折り曲げた。
「順番が逆になってしまった上に、報告も遅くなってしまい、申し訳ありません。お聞きのように、真琴さんと入籍を済ませて結婚しました。これから家族の一員として、よろしくお願いいたします」
真琴の父親に向かって、古庄は深々と頭を下げた。父親が何か発してくれるまで、頭を上げられなかった。
しかし、父親からは、なかなか言葉が出てきてくれない。
「あっ!お父さん……!!」
父親ではなく、真琴の張りつめた声が響いた。
反射的に古庄が頭を上げると、父親がそのまま前にのめって倒れていくのが見えた。
ゴンッ…!!
鈍い音と共に、父親の額がローテーブルにぶつかる。
「やだ!お父さん。気絶しちゃったの?正志ちゃん、手を貸して。お父さん、寝かしてあげないと…」
今度は父親のところに、真琴は駆け寄って、側に立っていた正志に声をかけた。
けれども正志は、そんな真琴を見つめて顔をゆがませる。
「…お姉ちゃんが結婚しちゃったなんて…。そんなの、嫌だぁ~~!!」
と、父親の介抱はせずに、そう言い残して居間を出て行ってしまった。
その行く手を真琴が呆気にとられて見ていると、古庄が父親の肩を持ち上げて、ソファーへと仰向けに寝かせてくれた。
「ものすごく驚かせてしまったみたいだね…」
申し訳なさそうな表情の古庄を見て、真琴の胸がキュンと痛む。
逆に、古庄を手放しに喜んで歓迎してくれない自分の家族のことを、申し訳なく思った。
「…ごめんなさい…。私が前もって、家族に話をしていれば良かったんです…」
普通、適齢期の娘が結婚相手を家に連れて来たならば、当然喜ばしいことなのだが、相手が古庄となればそうはいかないらしい。