恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「…そう言えば、真琴は高校はどこを出てるんだ?この近くだったら…」
古庄は真琴の人生を中学校までたどり、その後に思いを馳せて真琴に尋ねた。
「高校は都留山高校です。ちょっと遠いけど、行ってみます?」
「…いや、都留山高校だったら、行ったことあるんだ」
「えっ?!古庄先生も都留山高校に通ってたんですか?」
「生徒としてじゃなく、教師として1年だけ。大学出て、最初の勤務校だったんだ」
「大学出て、最初だったら…。私がいた時に…?」
と真琴は、古庄と自分との年齢差を考えて、記憶を検索している。
在学中に古庄のような教師がいたら、絶対に覚えているはずだ。
「きっと、君が卒業した後だ。俺は大学出てすぐの1,2年は、バックパッカーで世界を回ったり、海外でボランティアしたりしてたから」
「そうなんですか…!」
話をしている中で、古庄の意外な過去も明らかになって、真琴も目を丸くした。
「でも、思ってもないところで真琴と共通点があって嬉しいよ」
真琴も母校の空気を共有できていたことはもちろん嬉しかったが、それ以上に、古庄が自分と同じように思ってくれていることの方がもっと嬉しかった。
心地よい風に吹かれながら、心地よい会話を楽しんで、小一時間ほど歩いてから二人は真琴の実家へと戻ってきた。
居間を覗いて見ると、まだ父親は横になっており、母親もまだ帰宅していないようだ。
「…お父さん、あれってただの昼寝じゃないの?」
真琴が呆れ顔で肩をすくめる。
でも、その父親の眠りを妨げないように、真琴は古庄を2階へと導いた。