恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
古庄の目が点になるのを見て、真琴は古庄の腕の中で面白そうに笑い始める。
いたずらっぽい口のきき方とその笑顔が何とも言えず可愛らしくて、愛しさが募ってくる。
折しも、今は狭い部屋に二人きりだ。
…古庄はもう我慢が出来なくなった。
真琴の後ろ頭に手を回して引き寄せると、その唇に口づけた。
いきなり始まった深くて情熱的なキスに、しばし真琴は我を忘れて応えてしまう。
けれども、ここは自分の実家で、隣の部屋には弟もいて、階下には両親もいる…。
その現実がいきなり頭の中に浮かんできて、焦った真琴は、古庄の頬を両手で挟んでお互いの唇を引き離した。
「…ダメです!」
そう言われても、古庄の一度高まってしまった感情は、そう簡単には抑えられない。
「君がそう呼ぶまでもなく、俺はスケベなんだぞ」
と、抱きしめる腕にいっそうの力を込め、情熱に任せて再び唇を重ねようとする。
けれども、気が気でない真琴は、それどころではない。
「こんなところ、誰か家族に見られたら…」
「……もう見られてるよ」
その声を聞いた瞬間、真琴と古庄が凍りつく。
身を寄せ合ったままドアの方を振り向くと、そこには正志が立っていた。
「やだ…!正志ちゃん。黙って入って来るなんて、なんて子なの?!」
焦りと恥ずかしさのあまり、弾かれたように古庄の腕の中から飛び出して、真琴は顔を真っ赤にした。
「黙ってじゃないよ。ノックしても返事しなかったんだよ…」
と、敵意たっぷりの目つきで正志は古庄を睨みつけた。
古庄の端正さは男性でも不快に感じるものではなく、こんな風に古庄を見る人間は珍しい。
「……何か用があるの?」
決まりの悪さをごまかすように、真琴が正志に声をかけた。
真琴からの邪魔者扱いされているような態度を察知して、正志は少し不満そうだ。