恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②

気まずいリビング




いつまでも、この居心地のいい部屋で二人だけの時間に浸っていたかったが、今日の本来の目的はそれではない。


それから程なくして、二人は階下へと降りてきた。

父親の方も起き上っていて、もう大丈夫みたいだが、ローテーブルにぶつけた額の赤みが痛々しい。


真琴が台所にいる母親を手伝い始めると、古庄はリビングのソファーに向かわざるを得ず、父親とそれから正志と、否が応でも対峙しなければならなくなった。


危ない生物でも見るかのような、この二人の視線が身につまされて、古庄はどうにもいたたまれない。

何か突破口を開きたいが…。


古庄はまず、普段接している生徒たちと同じ年代の正志に照準を合わせた。


「正志くんは…、部活はラグビーをやってるのかな?」


声をかけられて、正志は鋭い目つきで古庄を見返した。


「……何で知ってるんだよ?お姉ちゃんから聞いたの?」


「いや、さっき、スクリューパスとか言ってたから。ラグビー部がある中学校って、珍しいね」


古庄がそういうのを聞いて、正志の表情はますます険しくなる。


「………僕、中学生じゃなくて、高校生だし…!」


「…えっ!?」


しまった…!とばかりに、古庄は目を丸くした。
一瞬にして、どっと冷や汗が噴き出してくる。


正志と共通の話題で打ち解けようと目論んでいた古庄の思惑は、見事に裏目に出てしまった。


「正志ちゃんは、都留山高校の1年生なんです…」


前もって知らせておけばよかった…と書いてある顔で、真琴が台所から声をかけて助けてくれる。



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