恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
姉と弟、そして義兄
父親と正志は、先ほどからソファーに座ってテレビを見ている。
古庄がいないと、心なしか家族も少し肩の力が抜けているみたいで、真琴はいつもの家の雰囲気の中にいるような気持ちになった。
母親も台所の片づけが終わると、リビングのソファーに腰を下ろしてフッと息を吐く。
「正志ちゃん。今日お姉ちゃんが作ってくれたイチゴのムース、久しぶりに食べたら美味しかったでしょ?あなた、好きだったわよね?」
そんな風に母親から話を振られて、正志は見ていたテレビから真琴の方へとチラリと視線をよこした。
「……別に。お姉ちゃんは、僕に食べさせたいんじゃなくて、アイツに食べてもらいたかったんだよね?」
正志は依然そう言って、突っかかった。
どうしても古庄の存在は、彼の中では認められないみたいだ。
真琴は正志の座るソファーに脇に立って、優しく語りかけた。
「……正志ちゃん。そんな言い方されると、お姉ちゃん、悲しい。和彦さんはあなたのお義兄さんになる人なのよ?」
真琴は何とか正志を諭そうとしたが、これに対して正志はとうとう逆上した。
「…なんだよ。お姉ちゃんは悲しいかもしれないけど、僕だって!僕の気持ちはどうでもいいの?」
真琴は正志に睨みつけられて、ハッとする。
高校生とはいえ、まだ思考は幼い正志に、今回のことは強烈過ぎたのだろう。
だけど、大事な正志には、ちゃんと古庄のことを理解してほしい。
言葉を尽くして言い聞かせれば、きっと正志は解ってくれると思った。これまでもそうやって、姉弟の絆を培ってきたように。