恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②




「そうね、お茶。私も飲みたいわ。一緒に飲みましょう」


母親はソファーを立ってお茶を淹れはじめると、再び男3人がソファーに残された。

父親は相変わらずだが、正志は苦虫を噛み潰したようないっそう険しい顔をしている。
古庄が、このただならぬ雰囲気の源は彼だと確信した時、目の前にお茶が供された。


「寝る前だから、ほうじ茶にしたわ。正志ちゃん、これ飲んだらお勉強なさい。まだ宿題してないでしょう?」


母親はそう言って、これ以上厄介ごとが起こらないように、暗に正志を追い払おうとした。
これを聞いて、正志はますます不穏なオーラを漂わせる。


古庄が香ばしいお茶を口に含んで、少し気分を落ち着けた時、とうとう正志が口火を切った。

真琴とのやり取りでくすぶっていた自分のイライラを、容赦なく今度は古庄にぶつけはじめる。


「何を企んでるんだよ?お姉ちゃんはダマせても、僕はダマされないぞ!」


いきなり出てきた正志の激しい言葉に、古庄は戸惑った。
と同時に、母親は焦ってそれを制止しようとする。


「正志!失礼なことを言うのは止めなさい!」


「…真琴をダマす?何もダマしていることなんてないけど…」


母親の焦りに引き替え、古庄は冷静なものだった。

 しかし、この態度が正志にはしらばっくれているように感じられて、ますますいきり立つ。


「お姉ちゃんだったら、女遊びでも何でも、やりたい放題やっても許してくれるって思ってるんだよね?そうじゃなきゃ、お前みたいな奴が、真面目なだけで平凡で何の取り柄もないお姉ちゃんと、結婚なんてするはずないよ!」


正志のこの物言いを聞いて、穏便に対処しようと思っていた古庄にもスイッチが入った。

お茶をローテーブルに置いて、顔を上げて正志をじっと見据えた。




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