恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



「そう?そうしてもらえると助かるわ。それじゃ、お布団はどうする?あなたの部屋に敷く?」


母親の提案に、「おっ…♡」と古庄は心の中でガッツポーズをする。


「ううん。2階に持って上がるの面倒だし、私の部屋は狭いし」


……古庄は落胆した。

時としてこんな真琴が、本当に恨めしくなる。


自分のことを深く想ってくれているのは、古庄も理解しているけれども、真琴がなりふり構わず求めてくれるようなことはない。



「それじゃ、お座敷に敷くわね」


母親が頷くのと同時に真琴もソファーを立って、そのまま母親を手伝いに座敷の方へと赴いた。




それから、お風呂から上がった父親は、普段と変わらず早めの就寝。

真琴と古庄、それに母親を加えての3人は、腰を落ち着けて話をした。
これまで結婚に至るまでの経緯や、これからの生活のことなどについて。

本当ならば、これらの話は父親も交えてしたかったけれど、まだ父親は落ち着いて話が出来る状態ではないみたいだ。今はとりあえず母親と話をして、少し時を置いてから、父親へ伝えられることを期待した。


途中で、正志が入浴している物音が聞こえてきたが、結局その姿を見ることはなく、そのまま自分の部屋へと戻ったらしい。


いつも通りの静かな夜は刻々と更けて、真琴からも大きな欠伸が出てくるようになり、そろそろ寝ることになった。




古庄は、真琴の両親の寝室の隣に位置する座敷へと案内される。

立派な床の間のある8畳の座敷の真中ほどに、一組の布団が敷かれている。枕もとには、真琴が置いてくれたのであろう、昼間古庄が来ていた洋服が畳まれてあった。



「それじゃ、おやすみなさい」


襖の間から頭をちょこんと出して、真琴が語りかけると、


「うん、おやすみ」


古庄は心の中の落胆を隠して、真琴に応えた。


真琴が微笑みを残しながら襖を閉めて、足音を響かせて遠ざかっていく。

古庄は「あ~ぁ…」と、深いため息を吐いた。





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