恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
思わず真琴は古庄の背後から手を伸ばし、パソコンをパチンと閉めてしまった。
驚いた古庄が、振り返って真琴を見上げる。
「……そんな話、職員室でしないでくださいっ」
焦った真琴は、他の職員に聞きとられないように、ヒソヒソと古庄に囁いた。
真琴に忠告されて、状況を把握した古庄は、何も言わずに首の後ろを掻いている。
「じゃあ、分かった…。こうしよう」
しばらくの沈黙の後、そう言って古庄は席を立ち、そのまま職員室を出て行ってしまった。
その行動を見守って、真琴は胸に小さな痛みを感じ始める。
――…まさか、古庄先生…。お、怒っちゃったの…?!
どんどん不安が大きくなっていき、真琴は古庄を追いかけようとした。
すると、真琴のバッグから音が鳴りだし、足止めされる。
急いでスマホを取り出して見ると、古庄からの着信だ。真琴はひとまずホッと、胸を落ち着けた。
「……はい」
と、真琴は電話に出ながら、古庄が出ていった方とは反対方向の出入口へと向かう。
メモ用紙でのやり取りではまどろっこしいと思ったのだろう。古庄にしてはまたまた珍しく、携帯電話を活用している。
「今度の週末、何か用事がある?」
「…いいえ、特にはありません」
「それじゃ、君を連れてさっきの旅館に行きたいと思ってるんだけど。一緒に行ってくれる?」
古庄に想像通りのことを提案されて、真琴の胸は急にドキドキし始めた。
そして、動転するあまり、
「…でも…」
と、逆説的なことをつい口走ってしまった。
「…でも?何か都合悪い?」
「いや、私じゃなくて、古庄先生が…。部活があるんじゃないですか?」
「……う…」
現実を突きつけられて、古庄は言葉に詰まる。