恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
それでなくても、週末婚の夫婦なのに、貴重な週末の一晩がこんな風に潰れてしまった…。
同じ屋根の下にいるのに、愛しい人を抱けないこの虚しさ…。
古庄は明かりを消し、布団をはぐって横になった。
早く眠ってしまって、このやり場のない悶々としたものを忘れてしまいたかった。
真琴は階段を上り、自分の部屋へ入るとホッと息を吐いた。
もう何年もこの家で暮らしていないとはいえ、やっぱりここに来ると心が落ち着く。
たまに帰省して、長年使ってきた自分のベッドに体を横たえるとき、圧倒的な安心感に包み込まれて、いつも心地よく眠りに落ちていくことが出来た。
その度に、どんなに離れた場所に住んでいても、自分の居場所は「ここ」なんだと、真琴は思っていた。
ところが、さっきまで強烈に襲ってきていた眠気が嘘のように、ベッドに入った瞬間から眼が冴えてきた。
心身ともに疲れていて、すぐにでも眠れそうだったのに…。
何度も寝返りを打って眠りに入ろうと試みるが上手くいかず、時だけが刻々と過ぎて夜が更けていく。
真琴は眠ることを諦めて、カーテンの隙間から漏れてくる隣の公園の街灯の光を見つめた。
眠れない理由は解っている――。
こんな感覚は、今日に限ったことではない。
毎晩、布団に入ると、必ず愛しい古庄を思い出す。
彼に愛してもらった記憶からその時の感覚を反芻して、心だけでなく体まで切なく疼き始める。
ましてや、今日は階下に古庄が眠っている。
いつもは「明日会える」と言い聞かせて抑え込んでいる感情が、今日は暴れ出して、真琴はとうとう我慢が出来なくなった。
衝動的に起き上り、居心地がいいはずのベッドを立った。
暗く寝静まった家の中を歩いて、古庄のいる和室へと向かう。隣の部屋には両親が眠っているので、そっと起こさないように。