恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「…じゃあ、俺は第2号になってもいいかい?」
正志はパスを投げながら、少し沈黙した。
それから、おもむろに口を開く。
「……いいよ。そのかわり、お姉ちゃんを泣かせたりしたら許さないからね…」
「もちろん、泣かせたりなんかするもんか」
正志の取り越し苦労に、古庄は胸を張って答える。
「…もし、浮気なんかしたら、…こ、殺してやるんだからね…!」
声を微かに震わせながら、そう言う正志の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
古庄は、正志が抱える真琴への深い想いと、自分に対する複雑な思いを感じ取った。
正志自身が真琴にとって一番近くにいる異性ではなくなったことと、真琴が新たな家庭を作ることへの寂しさ。
古庄の容貌から周りの女性が放っておかないことを感じ取って、真琴が苦労するのでは…という危惧と不安。
でも、きっとそれは、正志よりも父親の方がもっと強く感じていることなのだろう。
「俺は真琴さえ一緒にいてくれれば何もいらないんだ。浮気なんて、頼まれても不可能だと思うよ」
古庄の自信のある答えに、正志はまだ首をかしげる。
「…その…、すっごい美人から、色仕掛けで誘惑されても…?」
「そんなことにいちいち反応して浮気してたら、俺は女癖の悪いどうしようもない男になってるよ」
古庄はそう明るく言ったが、反面その言葉は、古庄が日常的にどれほどモテているのかを裏付けていた。
正志の不安は、消えるどころかますます色濃くなってくる。
「大丈夫。浮気をするような人間と、真琴は最初から結婚したりしない」
古庄はラグビーボールを投げながら、不敵に笑った。
その断言に揺らぎがなく、信念が込められているのは、投げられたパスの力強さと正確さで分かる。
パスを受け取った正志からも、それに呼応するように笑みがこぼれた。