恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
顧問をするラグビー部は、花園予選が間近に迫り、練習にも一段と熱が入っていた。
ラグビー部にはもう一人、塩尻というラグビー専門の体育教師が顧問としているが、大事な大会を目前にして、練習には一人でも多くの指導者がいるに越したことはなかった。
「……いや!それは、塩尻先生に頼んで、何とか部活は休ませてもらう」
しかし、古庄はもう必死だった。
婚姻届を出したのは、もうずいぶん前のことのように感じられるが、真琴を抱きしめてキスできたのは、文化祭の初日の早朝の一度きりだ。
誰に気兼ねすることなく、思いっきり真琴を抱きしめたい……!
真琴と想いが通じ合っていることが判ってから、我慢に我慢を強いられてきた古庄の、今の願いはこれだけだった。
そして、そのためにはどんな努力も、どんな犠牲だって厭わなかった。
本音を言えば、今日これからだって一緒に過ごしたいくらいだ。
しかし、人のいい古庄は、放生会で賑わう夜の街の見回りのため、生活指導部に加勢することになっていた。
普段は仕事で忙殺されているからこそ、明日は何としても、かねてより練っていた自分の計画を実現したかった。
「今の俺にとって何よりも大事なのは、君と一緒にいられる時間だ。いつか、そのうち…なんて待ってられない。こうでもしないと、君を煩わせるものから君を切り離して、俺が独り占めできないだろう?」
断固とした口調で言われた古庄の言葉に、真琴の息が止まる。
二人っきりの部屋で過ごす夜を想像しただけで、体中を緊張が駆け抜けていく。
何気ない言葉の中に潜む、古庄の深くて激しい想いに、真琴の心は甘く侵された。
「…分かりました…」
提案された瞬間から真琴の心は決まっていたが、やっとのことで真琴はそう答えることが出来た。