恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
父親と婿
朝食が済むと、正志は今日も午前中に部活があると言って、ほどなく出かけて行った。
スクリューパスが出来るようになったからか、その足取りは軽快で弾んでいた。
父親も本来ならば、こんな天気のいい休日には、トレッキングにでも出かけるのだろうが、今日は出るに出られないみたいだ。
かと言って、古庄と話をするでもなく、昨日と同様、リビングで新聞を読んだりテレビを見たりしている。
このままでは、せっかくの休日なのに、父親は好きなこともできず、心身ともに休むこともできない…。そう考えた真琴と古庄は、とりあえず今日は帰ることにした。
「それじゃ、お義父さん、お義母さん。お世話になりました。ありがとうございました」
車に乗り込む前、古庄が律儀にそう言って、頭を下げる。
「いえいえ、何のお構いもできませんでした。また近いうちに来てくださいね」
母親はそう言って答えてくれたが、一緒に玄関先まで出てきてくれている父親は、やはり無言だった。
「近いうちに来たいけど、和彦さんの実家にも行かなきゃいけないし、もう少しすると週末には花園の予選も始まるから…、当分はきっと来られないと思う」
「あら、そう…」
頭の中で周到にスケジュールを組んでいる真琴が、これからの予定を打ち明けると、母娘ともども残念そうに眉を寄せた。
「それじゃ、正志ちゃんによろしくね」
真琴もそう言って、車に乗り込もうという時、母親があることを思い出す。
「そうだ。北海道の叔母さんからジャガイモがたくさん届いてるのよ。少し持って帰る?」
「えっ!?ジャガイモ?持って帰るわ。少しじゃなくて、たくさん頂戴!」
「まあ!しっかりしてること!」
母親が笑いながら、その場を離れる。
真琴も開けかけていた助手席のドアから手を離し、母親を追って勝手口の方へと向かった。