恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
その屈託のない爽やかさは、久々に真琴の背筋をむず痒くさせる。
「…そんな風にちょっと怒ってる君も、可愛いなぁ…」
しみじみと発せられたその言葉に、真琴は真っ赤になりながら、まごついた。
「…やっぱり!私の話、聞いてなかったんですね?」
照れているのを隠すように、もっと怒ってるいるように振る舞うことしかできない。
「何でもいいよ。君の作ってくれる物だったら、なんでも俺の好物だから」
そう言いながら、古庄は真琴の右手を握り直す。
真琴はもう何も言えなくなった。
幸せに侵されて、ふわふわと雲の中を歩くようなこの感覚に、いつか慣れる時が来るのだろうか…。
真琴は落ち着かない気持ちを紛らわせるように、車窓を眺めた。
窓の外には、澄んだ秋の空気の向こうに、抜けるような青い空が広がっている。
そして、一息ついて、真琴はそっと古庄の左手を握り返してみた。
すると、それに気づいた古庄は、幸せそうに真琴に笑いかけてくれる。
……その笑顔は、この秋の空気のように澄み切って……、眩しいくらいに輝いていた。
恋はしょうがない。side story①
―― 完 ――