恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



都会育ちの真琴には、信じられないことだったが、自分の認識が甘かったと、今更ながらに反省する。


見回すと、駅舎の中に公衆電話があり、そこにタクシー会社の広告が貼ってあった。

真琴はひとすじの光明が見えた気がして、駆け寄ってみる。
すると、広告の端に手書きでこう書かれていた。


〈こちらの駅には、タクシーが到着するまで30分を要します〉



……真琴は目の前が真っ暗になった。


暇があったら動きたい性分の真琴には、30分もここで待ちぼうけなんて、絶対に嫌だった。


スマホで地図を確認してみると、古庄の実家まではそんなに遠くはないようだ。
真琴は意を決して、古庄の実家まで歩いて行ってみることにした。

…念のため、この広告を出しているタクシー会社の電話番号は控えておいたので、もしもの時は、タクシーを呼べばいい…。



稲刈りが終わった田んぼの中の道を、真琴はキャリーケースを転がしながら歩き始める。

高く青い空に紅葉の山々は綺麗に映え、たくさんの木々により作られた空気も澄んでいて美味しい。


ここは古庄のホームグラウンドだ。

今は誰もが見とれてしまうような古庄も、自転車を乗り回しながらここでヤンチャな幼少時代を過ごしたのかと思うと、何だか嬉しくなってくる。


――子どもの頃もやっぱり、今みたいに傑出してたのかな…?


そんなことを思うと、思わす笑いが湧き出てきて顔が緩んでしまう。



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