恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「ああ…、私は古庄晶(あきら)。和彦は私の弟だ」
――…やっぱり…!
古庄のように完璧な相貌の人間は、この世に二人とはいないと思うけれど、兄弟だったのならば、その現象もあり得るだろう。
――お姉さんがいるって聞いてた気がするけど、…お兄さんもいたのね…
「改めまして、よろしくお願いいたします。今日は、和彦さんは部活の試合があって来れなかったので、私一人でご挨拶に上がりました」
真面目な真琴らしい、礼儀正しいお辞儀を深々とする。
「ふうん…」
という相づちが聞こえ、真琴が顔を上げると、晶の顔がほのかに笑っていた。
秋の優しい日射しを受けて、輝くような晶の絶妙な美しさに、真琴の心臓が跳ね上がる。自分の顔が熱を持って、赤くなっていくのが分かった。
別に、晶のことが異性として気になる…というのではなく、さすがに古庄の兄弟、一瞬で人を惹きつける魅力がある。
しかも晶のそれは、古庄のそれに加え、柔らかい物腰と何とも言えない“色気”があった。
「それじゃ、まだここの仕事は時間がかかるから、一旦君を私の家まで連れて行くよ」
晶からそう言ってもらえたが、真琴は首を横に振った。
「いいえ、お仕事のお邪魔をしては申し訳ないので、お家の場所を教えてくだされば、歩いて行きます」
「歩いて行くって…、まだずいぶんあるよ?駅からここまでの2倍くらいはある」
「……えっ!?」