恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
それを聞いて、真琴は絶句した。
この先は山しかないように思われるのだが、そこをあと2時間歩くなんて、気が遠くなりそうだった。
「ここからは山道になって寂しくなるし、車で行った方がいい。…可愛い義妹に、何かあっちゃいけないし」
――…か、可愛い、『義妹』…!
真琴はもう沸点に達してしまって、顔から湯気が立ち上らんばかりに真っ赤になった。
わなわなと力が抜け、返す言葉も見つけられず、言われるがままに晶が運転する軽トラの助手席へと乗り込んだ。
そこから晶の言うように、木々の間を抜ける林道を通って車は進んだ。
目に映る木々の緑は、とても優しく癒されるけれども、車…しかも軽トラという狭い空間の中で、晶と二人きりになるということは、真琴に多大な緊張を強いた。
その緊張もあって身構えてしまい、真琴の体だけでなく言葉の反応もぎこちなくなる。
これは、出会ったばかりの頃の古庄に対する感覚と似ている。
「さっきはあんな態度をとってしまって、悪かったね」
晶はそう言いながら、チラリと真琴へ視線をよこす。しかし、それに合わせられない真琴は、とっさに顔を背けた。
「いえ、気にしていませんから」
緊張のあまり、口早に気持ちのこもらない返答しかできない。
――ああ…、また…!私の悪い癖が……!!
古庄の家族に失礼な態度はとれないと思った真琴は、どうにかしようと思うけれども、自分では制御不能だった。
車内に沈黙が漂うと、真琴の緊張はいっそう高まって、固唾をのんで到着するまでの10分ちょっとをやり過ごすしかなかった。