天使が舞い降りる。



私はなにも言えない。


「どうしてかなあ?るいお姉ちゃん。お母さん、どっかいたいのかなあ?」


思わず、私は奏ちゃんを抱きしめた。


「どうしたの?るいお姉ちゃん」


厚い涙の幕で、視界がぼやく。


ダメだ……今泣いてしまったら……私はもっと、奏ちゃんを混乱させてしまうから。






「涙」


奏ちゃんを抱きしめたまま……後ろから優しく肩に手が置かれる。


「もう、行こう。帰ろう」


サイだった。


私は奏ちゃんから体を離す。顔を見られる前にゴシゴシと涙をぬぐった。


「るいお姉ちゃん、泣いてるの?」


「ううん、違うよ?目がかゆかったの」


私は鼻を真っ赤にしながら、満面の笑みを奏ちゃんに返した。


泣いたら……すべてが終わりだと思ったから。


「ねえ、奏ちゃん」


「なに?」


「私、これから何回もここへ来るから……奏ちゃんに会いに来るから……」


少しでも、あなたが寂しくならないように……






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